研修修了生メッセージ

組踊研修修了生からのメッセージ


新垣 俊道(あらかき としみち)
第1期組踊研修生(平成17年4月~20年3月)
地方(歌三線)


○組踊の世界に入ろうと思った動機を教えてください。


高校生2年生と3年生の頃、校内の芸術鑑賞会で組踊に出演した事がきっかけです。当時、立方として出演しましたが、組踊の基礎である琉球舞踊をまったく知らない中での出演。ものすごい緊張をしたことと、「組踊って何だか楽しいな」と純粋に感じたことを今でも鮮明に覚えています。 もともと、琉球古典音楽を習っていて、沖縄の伝統芸能をより深く学びたいと沖縄県立芸術大学へ進学し、歌三線を専攻しました。大学では組踊も必修で、舞台での実演などを通して、多くの事を学ぶことができました。その事が尚一層と、組踊への魅力と関心をかきたてることとなりました。 2004年に国立劇場おきなわが開館し、その翌年には第一期組踊研修生の募集が始まりました。「組踊をさらに専門的に学びたい!」と募集と同時に応募を決めました。

○組踊の魅力を教えてください。


歌三線で研修を修了しましたので、地方の立場からお答えします。 組踊の地方は、琉球古典音楽で立方の心情、情景描写などを表現し劇全体を盛り上げる大きな役割を果たします。琉球舞踊の場合とは違い「歌持」と呼ばれる前奏がなく、台詞が唱え終わる語尾から二文字目に歌い出す「二仮名掛け」の技法があります。この技法は、歌い出すタイミングや音程など細心の注意が必要です。また、ほとんどの組踊の演目において独唱が組み込められており、激しい感情の高まりなどを音楽で表現します。そのため、地方の出来が作品全体の良し悪しを左右し、歌唱法や表現法など高度な技術が要求されます。 昔から「組踊を聴きに行く」とよく言われています。地方の音楽は勿論のこと、立方の唱えも音楽として捉え、視覚ではなく聴くだけでその内容や情感が伝わってくるものだというのが、その所以です。そこに組踊の大きな魅力があります。

○研修中一番印象に残っていることを教えてください。


人間国宝の先生方をはじめ、第一線の先生方から直接指導をしていただいたことです。研修外では、絶対にあり得ないことです。先生方の「芸」に圧倒されながらも同世代の仲間と切磋琢磨しながら研修に励んだことは大きな糧となっています。また、技術のみではなく先生方の芸談なども大変印象に残っています。 実技の科目では、専門楽器のほかに関連楽器(箏・笛・胡弓・太鼓)や琉球舞踊なども学ぶことができました。また講義では、琉球芸能史や詞章研究など学術的方向から実演の裏付けとなるものを学ぶことができ、芸の深みへと繋げるきっかけを得ることができました。その他、将来実演を続けるための身体訓練やボイストレーニングは今でも大変役立っています。 研修のすべてが大変印象深く、今ではその一つ一つが引出しとして生かされていると思います。そういう意味でも、3年間の研修は非常に恵まれた環境、密度の濃い内容でした。

○組踊研修生に応募を考えている皆さんへメッセージをお願いします。


将来、組踊の立方もしくは、地方の舞台人として観客へ感動を伝えたいと考えている方は、是非応募した方が良いと思います。しかし、生半可な心構えでは研修を続ける事は難しいかもしれません。3年間の研修は、同じ事の繰り返しで、すぐに成果がでるわけではありません。正直に言うと地味です。目標がない者にとっては退屈な研修となります。しかし、己自信で日々の目標を持ち、取り組むことで有意義であっという間の3年間となります。そういう方は、必ずや何か大きなものを得ることができることと思います。是非、挑戦してみて下さい。